函館1泊旅行記 2日目その2 – フレンチランチから東北以北最古のエレベーターまで〜明治の産業遺産と建築技術の粋を体験する旅の締めくくり〜

グルメ

五稜郭での歴史探訪を終えた函館建築散歩2日目の午後は、元町の老舗フレンチレストランでの優雅なランチから始まりました。その後、東北以北最古の手動式エレベーターが残る旧丸井今井呉服店函館支店、そして函館を代表する産業遺産・金森赤レンガ倉庫群を巡り、充実した建築散歩の最終章を迎えました。

メゾン フジヤ ハコダテで極上のフレンチランチ

五稜郭から元町エリアに戻り、昼食は「メゾン フジヤ ハコダテ」でランチコースSをいただきました。期待通りというより期待を上回る素晴らしい内容で、コース料理は一品一品丁寧に作られており、どの料理も本当に美味しく、最初から最後まで満足のいく味わいでした。

食材の質の高さと調理技術の確かさを感じることができ、流石の実力を見せつけられた思いです。今回はワインペアリングもお願いしましたが、私の飲むペースが予想以上に早く、予定していた料理がまだ残っているのにワインを飲み終えてしまうという失態を犯してしまいました。

しかし、スタッフの方が気を利かせてサービスで追加のワインを提供してくださり、その心遣いにとても感動しました。このようなホスピタリティの高さも、このお店の魅力の一つです。

デザートも期待を大きく上回る内容で、たくさんの種類が出てきて目移りするほどでした。どれも繊細で美味しく、食事の締めくくりとして申し分なく、甘さのバランスも絶妙で、コースの余韻を美しく演出してくれました。

料理の質、サービス、雰囲気、すべてにおいて高いレベルを保っており、函館での特別な時間を過ごすことができました。

旧丸井今井呉服店函館支店 – 大正期商業建築の傑作

フレンチランチで優雅なひとときを過ごした後、向かったのは現在の函館市地域交流まちづくりセンターとして活用されている旧丸井今井呉服店函館支店です。この建物は1923年(大正12年)に、札幌に本店がある丸井今井呉服店の函館店として鉄筋コンクリート造りの3階建てとして建てられたもので、当時の十字街の繁栄の中心的存在でした。

建築的に注目すべきは、大正期の商業建築として高い完成度を示している点です。耐火性に優れた鉄筋コンクリート造の採用は、1907年と1934年の函館大火を経験した函館において、防火建築への意識の高まりを示しています。2007年(平成19年)に大改修が行われ、現在は地域の交流施設として生まれ変わりました。

東北以北最古の手動式エレベーター – 産業技術史の生きた遺産

この建物の最大の見どころは、ドアの開閉から箱の上下まで、すべて手動制御というエレベーターです。昭和5年(1930年)に増築された際にエレベーターも取り付けられ、現存する最も古いエレベーターとして、東北以北では唯一の貴重な産業遺産となっています。

一般的にこの手の動きものは静的保存で、ただ眺めるだけというのが通例ですが、ここでは実際に乗ることができます。しかも、無料という素晴らしいサービスです。

体験を希望すると、まちづくりセンターの窓口で申し出ることで、担当者が鍵を持って案内してくれます。鍵がないと稼働しない仕掛けになっており、勝手自由には動かせませんが、安全性を確保した上で約100年前の技術を体験できるのは感動的でした。

手動でレバーを操作してエレベーターを動かす体験は、現代の全自動システムに慣れた身には新鮮で、大正末期から昭和初期の技術力の高さを実感することができました。昭和9年の大火で内部が延焼したその後、手動式のエレベーターも健在で、戦火を乗り越えて現代まで稼働し続けている技術遺産の価値は計り知れません。

金森赤レンガ倉庫群 – 明治の港湾施設が生まれ変わった商業複合施設

函館建築散歩の最後は、函館を代表する観光スポット・金森赤レンガ倉庫群へ向かいました。この建物群は、大分県出身の実業家・初代渡邉熊四郎が明治時代に開業した「金森洋物店」が起源で、明治2年(1869年)から始まる長い歴史を持っています。

現在の建築は、1887年(明治20年)に函館で最初の営業倉庫を開業したことが始まりで、大火による焼失後、1909年(明治42年)に不燃質のレンガで再建されたものです。1988年からショッピングモール、ビアホール、イベントホールなどとして営業を開始し、産業遺産の見事な転用事例となっています。

建築的に興味深いのは、明治期の港湾倉庫建築の構造や意匠をそのまま保持しながら、現代の商業施設としての機能を付加している点です。明治に建てられた7棟の赤レンガ倉庫をそのまま利用した複合施設の総称として、歴史的建造物の保存と活用の成功例といえるでしょう。

函館建築散歩の総括 – 建築好きにはたまらない街

1泊2日の函館建築散歩を通じて実感したのは、函館という都市が持つ建築文化の豊かさと多様性です。明治の開港から昭和初期にかけて、西洋建築技術の受容、和洋折衷様式の発展、産業建築の進歩、そして現代の保存・活用技術まで、建築史の各段階を代表する建物群が一つの都市に集積している例は、日本国内でも稀有な存在といえます。

特に印象深かったのは、単なる観光地ではなく、それぞれの建築が現代でも実際に機能していることです。教会は現在も信仰の場として、旧官公庁建築は文化施設として、産業遺産は商業施設として、それぞれが新たな生命を吹き込まれながら保存されています。

宗教建築、住宅建築、官公庁建築、商業建築、産業建築と、建築の各分野にわたって明治から昭和の建築史を体系的に学べる函館は、建築愛好家にとってまさに「建築博物館」のような存在でした。

今回の旅を通じて、函館が日本の近代化過程で果たした重要な役割と、それを物語る建築群の歴史的価値を深く理解することができました。函館の街並みは、建築好きには本当にたまらない、何度でも訪れたくなる魅力に満ちた場所であることを改めて確信した、充実の建築散歩となりました。

今回訪れた建造物

旧丸井今井呉服店函館支店 〒040-0053 北海道函館市末広町4−19

東北以北最古の手動エレベーター 〒040-0053 北海道函館市末広町4−19

金森赤レンガ倉庫 〒040-0053 北海道函館市末広町14−12

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