函館1泊旅行記(続き) – 八幡坂からプレーリーハウス、相馬家住宅へ〜港町のビュースポットと近代建築の名作を巡る〜

北海道

教会群の見学を終えた後は、函館観光の代表的なビュースポットである八幡坂へ向かいました。そしてその後、建築愛好家には堪らない隠れた名作建築を2軒見学。函館の多様な建築文化を体感する充実した散策となりました。

八幡坂 – CMロケ地として名高い函館屈指の眺望スポット

教会群を後にして向かったのは、函館で最も美しい坂道として名高い八幡坂です。かつて坂の上に函館八幡宮があったことからその名がついたこの坂は、1980年代にCMのロケ地として評判となり、「チャーミーグリーンの坂」の愛称でも親しまれています。

坂の突き当りには演歌界の大御所・北島三郎氏が通った函館西高校があり、その手前から函館港へと一直線に続く石畳の坂道は、まさに絵に描いたような美しさでした。

残念ながら今回は路面電車も入れた完璧なショットを撮影することはできませんでしたが、青い海へと続く真っ直ぐな坂道の景観は圧巻の一言。明治末期から昭和初期にかけて最も繁栄したこの地区には、教会や赤煉瓦の倉庫など洋風・和風・和洋折衷の建物が多く残り、函館山から函館港に向かう坂道や路面電車が走る街路と調和して特色のある町並みを形成しています。

プレーリーハウス(旧佐田邸) – フランク・ロイド・ライト様式の隠れた名作

八幡坂から日和坂へ移動し、向かったのは建築好きなら一度は見ておきたい「プレーリーハウス」(旧佐田邸)です。この通称がついたのは、設計者・田上義也の師である、フランク・ロイド・ライトの草原様式(プレイリースタイル)の建築物からです。

フランク・ロイド・ライトといえば近代建築三大巨匠と呼ばれる建築家の一人であり、東京の帝国ホテルを設計した人物として知られています。このプレーリーハウスは、ライトの薫陶を受けた田上義也による作品で、函館の住宅建築史上極めて貴重な存在です。

水平線を強調した低い軒先と、大地に根を張るような安定した構成は、まさにプレーリースタイルの特徴を体現しており、「函館らしくない」と言われるほど独特の存在感を放っています。草原に溶け込むような設計思想を北海道という土地で実現した稀有な建築として、建築史的価値は極めて高いといえるでしょう。

旧相馬家住宅 – 国指定重要文化財の和洋折衷豪邸

次に訪れたのは、2018年に国の重要文化財に指定された旧相馬家住宅です。北海道屈指の豪商であり、篤志家として函館に多大な貢献をした初代相馬哲平の私邸として明治末期に建てられたこの建物は、一級建材を使用し、100年以上の時を経てなお見事な職人の技と意匠、気品ただよう歴史的建造物となっています。

和洋折衷の建築様式が見事に調和したこの住宅は、明治期の上流階級住宅建築の到達点を示す重要な事例です。西洋建築の技法を取り入れながらも、日本の伝統的な建築美を失わない絶妙なバランスは、当時の職人技術の高さを物語っています。

特に注目すべきは、内部に用いられた贅沢な木材や金具、そして細部にわたる装飾の精緻さです。函館の発展に大きく貢献した相馬哲平の威信をかけた私邸として、当時の最高水準の建築技術と材料が惜しみなく投入されていることが分かります。

函館の建築多様性を実感する一日

今日一日の散策を通じて改めて感じたのは、函館という都市の建築文化の豊かさです。宗教建築から始まり、景観としての都市デザイン、モダニズム建築の受容、そして近代和洋折衷住宅まで、これほど多様な建築様式が一つの都市に集積している例は、日本国内でも稀有な存在といえるでしょう。

函館の路面電車は札幌市電とともに北海道遺産の一つに選定されており、1897年(明治30年)に開業した亀函馬車鉄道を起源とする歴史ある交通インフラも、この多様な建築群を結ぶ重要な要素となっています。

国際港湾都市として早くから西洋文化を受け入れ、同時に日本の伝統文化も大切に保持してきた函館の歴史が、今日見学した建築群には色濃く反映されているのです。

明治期官公庁建築群へ向けて

八幡坂、プレーリーハウス、相馬家住宅と巡った後は、この後旧函館区公会堂、旧北海道函館支庁庁舎、旧イギリス領事館といった明治期の官公庁建築群を見学する予定です。これらの建築群は、函館が北海道開拓の拠点として、また国際港湾都市として発展した歴史を物語る重要な建築遺産群となっています。

建築散歩は体力を使いますが、それ以上に知的好奇心を刺激される充実した時間です。官公庁建築群の見学を終えたら、一度ホテルに戻って夜景鑑賞前の休憩を取る予定です。

函館の建築巡りはまだまだ続きます。次回のブログでは、旧函館区公会堂をはじめとする明治期官公庁建築の建築史的価値と、函館山からの絶景夜景について詳しくレポートする予定です。

今回訪れた建造物

プレイリーハウス 〒040-0054 北海道函館市元町32−10

旧 相馬家住宅 〒040-0054 北海道函館市元町33−2

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