秋の肌寒い風が頬を撫でる10月のアムステルダム。石畳を踏みしめながら、今日は運河の街の美しい建築群と、少し足を延ばしたザーンダムの伝統的木造建築を巡る特別な散歩に出かけました。
アムステルダム運河沿いの建築美
プリンセン運河沿いを歩いていると、17世紀の商人たちが競って建てた「カナルハウス」が軽やかに傾いている光景に出会います。特にヘーレングラハト通り605番地の「傾いた家」は、5.1度の傾斜でピサの斜塔を上回る角度。この「不安定さ」が生み出す美しさに魅了されました。

ダム広場では、バロック建築の傑作・アムステルダム王宮が堂々とした姿で迎えてくれます。1665年完成の建物は「世界第8番目の不思議」と呼ばれ、13,659本の木杭の上に建つ構造的な巧妙さにも感動。内部の市民の間に描かれた世界地図は、17世紀オランダの海洋覇権を物語る貴重な遺産です。
ザーンダムの木造建築に癒される

中央駅からわずか12分の電車旅で到着するザーンダム。運河沿いに立ち並ぶ緑色の木造建築群「ザーンセ・スハンス」は、18世紀のオランダ田園風景そのものです。8基の風車と伝統的な緑の木造家屋の組み合わせは、まるでヴェルメールの絵画の世界。


現在も稼働する染料風車「デ・カット」では職人が伝統的な顔料作りを実演。チーズ工房「Catharina Hoeve」では、17世紀から続くゴーダチーズの製法を見学しながら、木造建築が生み出す熟成環境の巧妙さに感嘆しました。

伝統が息づく現代の魅力
運河の街の石造建築が見せる都市的洗練と、風車の里の木造建築が醸し出す温かな郷愁。この対比こそがオランダ建築文化の豊かさです。15,000歩を超えた一日でしたが、美しい建築群に魅了され続けた時間は、あっという間に過ぎていきました。

現代も人々の生活の場として機能し続ける歴史的建造物たちは、建築の本質的価値を教えてくれます。オランダ建築の多面性を探る旅は続きます。
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